臨床神経学

症例報告

多発脳神経障害,尿崩症を呈したMPO-ANCA関連肥厚性硬膜炎の1例

安田 謙1)*, 斎ノ内 信1), 後藤 昌広1), 村瀬 永子1), 大谷 良1), 中村 道三1)

Corresponding author: 独立行政法人国立病院機構京都医療センター神経内科〔〒612-0861 京都市伏見区深草向畑町1-1〕
1)独立行政法人国立病院機構京都医療センター神経内科

症例は61歳女性.感冒様症状に引き続き,難聴,口渇で発症した.嗅覚脱失,嚥下構音障害,顔面神経麻痺,声帯麻痺を認め,頭部MRIで,下垂体腫大,後葉のT1強調像高信号の消失,前頭葉腹側に硬膜肥厚を認めた.高ナトリウム血症にも関わらず尿浸透圧は低値であった.MPO-ANCAが陽性で,硬膜生検で硬膜に肉芽腫性炎症を認めたことからMPO-ANCA関連肥厚性硬膜炎,および尿崩症と診断し,ステロイドパルス療法,次いで後療法を行い軽快した.しかしステロイド漸減中に高用量で再発したため免疫抑制剤を併用し,長期の寛解を得ている.MPO-ANCA関連肥厚性硬膜炎では,早期から免疫抑制剤の併用を考慮する必要がある.
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(臨床神経, 56:334−337, 2016)
key words:MPO-ANCA,肥厚性硬膜炎,尿崩症,下垂体炎

(受付日:2015年12月24日)