臨床神経学

症例報告

非細菌性血栓性心内膜炎により多発脳血管閉塞をきたした1剖検例

永金 義成1)*, 武澤 秀理1), 桂 奏2), 山本 康正1)

Corresponding author: 京都第二赤十字病院脳神経内科〔〒602-8026 京都市上京区釜座通丸太町上ル春帯町355-5〕
1)京都第二赤十字病院脳神経内科
2)京都第二赤十字病院病理診断科

症例は60歳,男性.前日からのめまいと嘔吐で受診した.神経学的に左ワレンベルク症候群を呈し,頭部MRIで左延髄外側に急性期梗塞巣を認め,左大脳半球にも小梗塞巣を認めた.MRAでは左椎骨動脈と左内頸動脈が描出されなかった.抗血栓療法を行ったが,球麻痺が進行し,左大脳半球の広範な梗塞による脳ヘルニアをきたして発症第9日目に死亡した.病理学的検索では,僧帽弁に疣贅が付着し,非細菌性血栓性心内膜炎(non-bacterial thrombotic endocarditis; NBTE)と診断した.全身の動脈に硬化性変化を認め,左椎骨動脈硬膜貫通部と左内頸動脈海綿静脈洞部の石灰化を伴った狭窄部は,僧帽弁の疣贅と同様の血栓により閉塞しており,NBTEによる脳塞栓症と病理診断した.
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(臨床神経, 56:191−195, 2016)
key words:脳梗塞,塞栓症,非細菌性血栓性心内膜炎

(受付日:2015年12月28日)