臨床神経学

短報

頭頂葉皮質病変で発症し,当初に脳梗塞との鑑別を要した単純ヘルペス脳炎の1例

原 善根1), 石井 信之1)*, 酒井 克也1), 望月 仁志1), 塩見 一剛1), 中里 雅光1)

Corresponding author:宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学講座〔〒889-1692 宮崎県宮崎市清武町木原5200〕
1)宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学講座

症例は73歳女性.2014年9月某日に右下肢に一過性の痺れを自覚した.近医MRIでは右頭頂葉皮質に病変を認めるのみで,一過性脳虚血発作として加療された.5日後に突然の左不全麻痺のため近医入院し脳梗塞として加療された.翌日に高熱も出現したため当科転院となった.右側頭葉病変も新規出現し,髄液中の単純ヘルペスDNAが陽性であったことから単純ヘルペス脳炎と診断した.単純ヘルペス脳炎は側頭葉以外の病変のみを呈することも少なくない.画像検査で大脳皮質に異常があるが脳梗塞の診断に疑問がある場合は,その初期の可能性も考慮して慎重な経過観察が必要と考えられた.
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(臨床神経, 56:104−107, 2016)
key words:単純ヘルペス脳炎,脳梗塞,MRI,拡散強調画像

(受付日:2015年7月6日)