臨床神経学

症例報告

偏食による亜鉛過剰摂取が原因と考えられた銅欠乏性ミエロパチーの1例

本岡 里英子1)*, 山本 真士1)

Corresponding author: 神戸赤十字病院神経内科〔〒651-0073 神戸市中央区脇浜海岸通1-3-1〕
1)神戸赤十字病院神経内科

症例は39歳女性.1年前より下肢痙性,上下肢異常感覚が出現し,痙性による歩行障害が進行した.神経学的に両下肢痙性,両下肢深部感覚障害,四肢異常感覚を認めた.各種自己抗体,HTLV-1を含むウイルス抗体,腫瘍マーカー,ビタミンに異常を認めず,髄液細胞数,蛋白は正常で,OCB,MBPは陰性であった.頭部MRIは異常なく,頸胸髄MRIで,後索にT2WI高信号を認めた.血清銅,セルロプラスミンが低値であり,銅欠乏性ミエロパチーと診断した.生活歴を再聴取した結果,5年以上前から牡蠣を毎日15〜20個摂取するという極端な食生活が判明し,亜鉛過剰摂取が原因と考えた.亜鉛過剰摂取による銅欠乏症の原因として本例のような食餌性は稀である.
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(臨床神経, 56:690−693, 2016)
key words:銅欠乏症,ミエロパチー,亜鉛過剰摂取

(受付日:2016年7月7日)