臨床神経学

症例報告

脊髄MRIで胸髄から円錐部に異常信号を認めた頭蓋頸椎移行部硬膜動静脈瘻の1例

上田 雅道1), 上田 美紀1)3), 竹内 有子1), 落合 淳1)*, 馬渕 千之1), 服部 新之助2)

Corresponding author:名古屋掖済会病院神経内科〔〒454-8502 名古屋市中川区松年町4-66〕
1)名古屋掖済会病院神経内科
2)名古屋掖済会病院脳神経外科
3)現:名古屋大学医学部附属病院神経内科

症例は60歳の女性である.6週間にわたり間欠的に出現する両下肢脱力と残尿感があったが歩行障害が増悪したため当院を受診した.対麻痺と下肢にビリビリとした異常感覚,排尿障害を呈していた.MRIではT2強調像で胸腰髄の腫大,Th3のレベルから脊髄円錐に高信号域,造影T1強調像で脊髄前方に異常血管を認めた.血管造影検査で右椎骨動脈と右上行咽頭動脈からの流入動脈と脊髄前面を下降する流出静脈を認め,右頭蓋頸椎移行部硬膜動静脈瘻と診断した.動静脈瘻遮断術により症候と画像所見の改善を認めた.胸髄以下のレベルに病変を呈する頭蓋頸椎移行部硬膜動静脈瘻は稀であり報告する.
Full Text of this Article in Japanese PDF (781K)

(臨床神経, 56:37−42, 2016)
key words:頭蓋頸椎移行部硬膜動静脈瘻,脊髄症,動静脈瘻遮断術,椎骨動脈,上行咽頭動脈

(受付日:2015年8月5日)