臨床神経学

症例報告

左視野の顔面および単純な図形の変形視を呈した脳梁膨大部右側梗塞の1例

永石 彰子1)*, 成田 智子1), 権藤 雄一郎1), 中根 俊成1), 福留 隆泰1), 松尾 秀徳1)

Corresponding author: 独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センター神経内科〔〒859-3615 長崎県東彼杵郡川棚町下組郷2005-1〕
1)独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センター神経内科

症例は78歳の女性である.人物の顔の,向かって左側の眼と鼻の孔が小さくみえることに気付いた.顔の輪郭や景色にゆがみは感じなかった.頭部MRIで脳梁膨大部右側の新鮮梗塞をみとめた.顔の構成要素,とくに「眼」で変形視が生じ,動物の写真,人物の顔の絵でも同様の反応がえられた.顔の絵を90度回転しての呈示や単純な図形では左側に位置する部分に変形視が生じた.その他の神経症状や脳梁離断症候はみとめなかった.脳梁膨大部病変により視覚に関する情報伝達に障害が生じることで変形視が生じるが,顔および単純な図形は変形視の対象となりやすい可能性があり,それらは視覚情報の障害が知覚されやすいためではないかと考えた.
Full Text of this Article in Japanese PDF (633K)

(臨床神経, 55:465−471, 2015)
key words:変形視,脳梗塞,脳梁膨大部,顔,単純な図形

(受付日:2014年9月24日)