臨床神経学

症例報告

近位筋優位遺伝性運動感覚ニューロパチーの2症例

森 千晃1)*, 齋藤 朋子1), 齊藤 利雄1), 藤村 晴俊1), 佐古田 三郎1)

Corresponding author: 国立病院機構刀根山病院神経内科〔〒560-8552 大阪府豊中市刀根山5-1-1〕
1)国立病院機構刀根山病院神経内科

中年以後に発症した緩徐進行性の近位筋優位筋力低下・筋萎縮,四肢遠位のしびれ,四肢腱反射消失を呈し,神経伝導検査で感覚神経が導出不能であった男性2例を報告した.1例は祖父母が沖縄県,もう1例は両親が滋賀県出身で,常染色体優性遺伝と考えられる家族歴を有していた.また,1例では四肢や体幹に有痛性筋けいれんが頻発していた.近位筋優位遺伝性運動感覚ニューロパチー(hereditary motor and sensory neuropathy with proximal dominant involvement; HMSN-P)の遺伝子検査では,2例とも既報告の変異をみとめた.HMSN-Pは本邦では沖縄県と滋賀県に地域集積性のある疾患だが,患者およびその子孫は日本中に広がっていると考えられ,神経内科医が本疾患について熟知する必要がある.
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(臨床神経, 55:401−405, 2015)
key words:近位筋優位遺伝性運動感覚ニューロパチー,TRKfused gene,運動ニューロン疾患

(受付日:2014年8月20日)