臨床神経学

症例報告

多系統萎縮症に類似した多彩な中枢神経症状を呈し,免疫治療に反応した抗Ma2抗体陽性の1例

白石 渉1)*, 岩永 育貴1), 山本 明史1)

Corresponding author: JCHO九州病院神経内科〔〒806-8501 福岡県北九州市八幡西区岸の浦1-8-1〕
1)JCHO九州病院神経内科

症例は70歳の男性である.来院5ヵ月前から下肢の動作緩慢を自覚,症状は徐々に進行し,4週間前に独歩で前医入院,2週間前から歩行不能となり当院入院となった.下肢優位の脱力と感覚異常,歯車様固縮,ジストニアを呈し,起立性低血圧と膀胱直腸障害もみとめた.採血,髄液検査は異常なく,脳波検査で鋭波をみとめた.頭部,脊髄MRIに異常はなかった.自己免疫の関与をうたがい免疫治療を施行,症状の改善をえて,歩行可能となった.後日,抗Ma2抗体陽性が判明した.抗Ma2抗体陽性神経障害では辺縁系脳炎の他にレム睡眠時行動異常やパーキンソニズムを呈することがあり,積極的にうたがい,検査をおこなうことが必要である.
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(臨床神経, 55:96−100, 2015)
key words:多系統萎縮症,パーキンソニズム,自律神経障害,抗Ma2抗体,免疫治療

(受付日:2014年4月16日)