症例報告
血管炎を伴わず，血栓性虚血により多発性単神経炎を呈した原発性抗リン脂質抗体症候群の1剖検例
高橋 正年1）2）, 片多 史明1）, 佐藤 進1）, 柴山 秀博1）, 福武 敏夫1）＊, 村山 繁雄3）
＊Corresponding author: 亀田総合病院神経内科〔〒296-8602 千葉県鴨川市東町929〕
1）亀田総合病院神経内科
2）神鋼病院神経内科
3）東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンク
患者は78歳男性である．2003年より一過性の末梢神経障害や紫斑があり，両下肢の網状皮斑と多発性単神経炎を呈し来院した．一般検査，神経生検，皮膚生検でも血管炎所見は無く，病理学的に細動静脈に血栓を伴う軸索変性が認められた．抗リン脂質抗体が陽性であり，原発性抗リン脂質抗体症候群による虚血性末梢神経障害と診断された．抗凝固療法で一時的に症状改善が得られたが，2ヶ月後に再発し，免疫抑制療法中の感染を契機に劇症型となり多臓器不全で死亡した．剖検でも全身の動静脈塞栓が認められたが，血管炎所見はなかった．多発性単神経炎の鑑別として抗リン脂質抗体症候群も考慮する必要がある．
Full Text of this Article in Japanese PDF (1436K)
(臨床神経, 55：897−903, 2015)
key words：多発性単神経炎，虚血性ニューロパチー，抗リン脂質抗体症候群，劇症型抗リン質抗体症候群，剖検
（受付日：2015年2月5日）
