臨床神経学

短報

腎生検で血管炎所見を認めたMPO-ANCA陽性の肥厚性硬膜炎の1例

竹脇 大貴1)*, 辻 有希子1), 笠井 高士1), 吉田 誠克1), 中川 正法2), 水野 敏樹1)

Corresponding author: 京都府立医科大学神経内科〔〒602-0841 京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465〕
1)京都府立医科大学神経内科
2)京都府立医科大学附属北部医療センター神経内科

腎生検にて半月体形成を伴う糸球体を認めたANCA関連肥厚性硬膜炎の76歳男性の症例を報告する.多発脳神経障害に加え,MPO-ANCA陽性,頭部MRIでの造影効果を伴う硬膜肥厚,硬膜生検でのリンパ球の集積と硬膜肥厚所見を認めたことからANCA関連肥厚性硬膜炎と診断した.尿検査にて尿蛋白および尿潜血を認め,腎生検を施行したところ半月体形成を伴う糸球体を認めた.ANCA関連肥厚性硬膜炎においては,腎病変を伴う症例は少数であるため見過ごされる可能性があるが,予後不良と予測される.本症例は腎生検にて早期に腎病変を把握することができ,予後予測や治療法の決定に有用であった点で貴重な症例と考える.
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(臨床神経, 55:844−847, 2015)
key words:MPO-ANCA,肥厚性硬膜炎,腎生検

(受付日:2015年3月16日)