臨床神経学

症例報告

ステロイドパルス療法,血漿交換療法,免疫グロブリン静注療法に抵抗性で,長期ステロイド経口投与が有効であった橋本脳症の1例

徳田 直輝1)2)*, 今井 啓輔2), 笠井 高士1), 木村 彩香1), 阿部 能成3), 富永 敏行4), 福居 顯二3), 米田 誠5),中川 正法6), 水野 敏樹1)

Corresponding author: 京都府立医科大学大学院医学研究科神経内科学〔〒602-0841 京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465〕
1)京都府立医科大学大学院医学研究科神経内科学
2)京都第一赤十字病院脳神経・脳卒中科
3)京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学
4)京都府給与厚生課健康管理室(精神保健担当)
5)福井県立大学看護福祉学部
6)京都府立医科大学附属北部医療センター

30歳女性.失語症状後に抑うつ傾向となり,最初の医療施設に入院した.急性辺縁系脳炎を疑い,ステロイドパルス療法を実施するも改善なく,入院同日より幻覚や精神運動興奮などの精神症状が出現した.血漿交換療法と免疫グロブリン静注療法の追加も無効であり,精神症状が強く一般病棟での管理は困難となった.第17病日に他院精神科病棟に転院となった.ステロイドパルス療法と長期ステロイド経口投与および精神科治療により,症状は徐々に改善し第143病日に自宅退院できた.臨床経過および抗甲状腺抗体と抗NAE抗体の存在より橋本脳症と診断した.本例では精神科治療下での長期ステロイド経口投与が唯一有効であった.
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(臨床神経, 55:737−742, 2015)
key words:抗NAE抗体,橋本脳症,免疫グロブリン静注療法,長期ステロイド経口投与,血漿交換療法

(受付日:2015年3月31日)