臨床神経学

症例報告

ローマ字読み書き障害によりキーボード入力障害を生じた脳梗塞の1例

鈴木 由希子1)2)*, 稲富 雄一郎2), 米原 敏郎2), 平野 照之3)

Corresponding author: 大阪大学大学院医学研究科精神医学教室〔〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2-D3〕
1)大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室
2)済生会熊本病院脳卒中センター神経内科
3)杏林大学医学部脳卒中医学

症例は77歳の女性である.パソコンのキーボード入力操作においてタッチタイピング(ブラインドタッチ)を獲得していたが,左中大脳動脈領域の脳梗塞を発症した.右前頭葉には陳旧性脳梗塞をみとめた.軽度の右麻痺,喚語困難,仮名・漢字・アルファベット1文字の読み書き障害は急速に改善したが,キーボード入力が困難になった.失行や視知覚障害はなく,ローマ字の読み書き障害をみとめた.アルファベットをみて確認しながらであればキーボード入力ができるまで改善したが,タッチタイピングは再獲得できなかった.本例のキーボード入力操作に選択的な行為障害には,ローマ字の読み書き障害がもっとも影響していると考えた.
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(臨床神経, 55:8−12, 2015)
key words:脳梗塞,アルファベット,ローマ字,キーボード入力障害

(受付日:2012年8月7日)