臨床神経学

短報

MRIにて前頭蓋窩に限局した硬膜肥厚を呈し両側外眼筋麻痺をみとめた特発性肥厚性硬膜炎の1例

寺本 紘子1), 原 誠1)*, 森田 昭彦1), 亀井 聡1)

Corresponding author: 日本大学医学部内科学系神経内科学分野〔〒173-8610 東京都板橋区大谷口上町30-1〕
1)日本大学医学部内科学系神経内科学分野

症例は63歳男性である.約2週間の経過で進行した頭痛をともなわない右眼の外転制限と左全外眼筋麻痺を呈し,頭部MRIで前頭蓋窩の硬膜に限局性の硬膜肥厚と造影の増強をみとめたが,海綿静脈洞部への病巣の進展は明らかではなかった.全身検索で原因疾患をみとめなかった.特発性肥厚性硬膜炎と診断し,副腎皮質ステロイド薬を投与した.症状は4週間程で消失し,MRIの硬膜肥厚と造影の増強も改善した.本例では,MRIで前頭蓋窩に限局した硬膜肥厚をみとめたが,硬膜肥厚を指摘しえた領域を越えて病変がおよんだために両側外眼筋麻痺を呈したと考えられた.両側外眼筋麻痺を呈する症例では,前頭蓋窩をふくめた画像の検索が必要である.
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(臨床神経, 55:33−36, 2015)
key words:肥厚性硬膜炎,特発性,限局性,外眼筋麻痺,MRI

(受付日:2013年7月25日)