臨床神経学

短報

ANCA関連血管炎にともなって眼窩先端症候群を呈した1例

岩波 弘明1)*, 加藤 大貴1), 大中 洋平1), 中島 雅士1), 河村 満1)

Corresponding author: 昭和大学医学部内科学講座神経内科学部門〔〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8〕
1)昭和大学医学部内科学講座神経内科学部門

症例は73歳男性である.1週間で進行する複視と左眼視力低下で入院した.左眼は全盲で,かつ眼瞼下垂と全外眼筋麻痺をみとめた.MRIで眼窩先端近傍に異常をみとめず,右上顎洞と左乳突蜂巣に異常T2高信号をみとめた.血液検査では赤沈の亢進とMPO-ANCA陽性をみとめた.メチルプレドニゾロン・パルス治療によって複視はすみやかに改善し,MRI異常信号は消失した.本症例は,Wegener肉芽腫症または顕微鏡的多発血管炎がうたがわれた.同疾患において肉芽腫の圧迫によらない神経局在症候群を呈することはまれであり,本症例の特徴であった.眼窩先端症候群の鑑別としてANCA関連血管炎を考慮に入れる必要がある.
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(臨床神経, 54:158−161, 2014)
key words:ANCA関連血管炎,外眼筋麻痺,眼窩先端症候群,後部虚血性視神経症,Wegener肉芽腫症

(受付日:2013年5月1日)