臨床神経学

症例報告

遷延性意識障害にステロイドが著効し神経Sweet病のhuman leukocyte antigen(HLA)タイピングを示した若年性認知症の1例

仲谷 利栄1)2)*, 那波 一郎1), 川ア 裕子1), 森谷 真之1), 中野 美佐1), 巽 千賀夫1)

Corresponding author: 市立豊中病院神経内科〔〒560-8565 大阪府豊中市柴原町4丁目14番1号〕
1)市立豊中病院神経内科
2)現 大阪大学医学部附属病院神経内科・脳卒中科

症例は58歳男性である.1年前より認知機能障害が出現し他院にてアルツハイマー病と診断された.その後全身衰弱をみとめ当科入院となった.入院後突発的な発熱・炎症反応上昇・舌根沈下をともなう意識障害をくりかえし人工呼吸器管理を要した.髄液検査はしらべた範囲ではIL-6のみが22.2 pg/mlと増加していた.HLA(human leukocyte antigen)B54, Cw1が陽性であり,ステロイドを投与したところ,身体活動が著明に改善した.経過中皮膚病変はみとめなかったが,上記から神経Sweet病がうたがわれた.徐々に増悪する意識障害を主症状とし,髄液中の細胞,蛋白上昇をともなわず神経Sweet病のHLAタイピングを示した症例の報告は検索したかぎりみとめず貴重と考えられた.
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(臨床神経, 54:130−134, 2014)
key words:神経Sweet病,認知症,IL-6,HLA B54,HLA Cw1

(受付日:2012年6月30日)