臨床神経学

<Progress of the Year 2014 03-1> 脱髄性疾患の新たな切り口

多発性硬化症の治療選択バイオマーカーSema4A

中辻 裕司1)

1)大阪大学医学部神経内科〔〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2〕

多発性硬化症(MS)患者の約3割で血中セマフォリンSema4Aが著明高値を示す.Sema4A高値群にはインターフェロン(IFN)-β療法が有効でないばあいが多く,逆に障害の進行が助長されるばあいもある.疾患モデル動物EAEで検証実験をおこなうと,EAEはIFN-β治療で軽症化するがSema4A投与によりIFN-βの治療効果が打ち消され,むしろ増悪傾向を示した.機序としてSema4AがIFN-β治療下でもTh1,Th17分化を促進すること,およびT細胞の内皮への接着を促進することが一因である.まずSema4Aを測定し,高値MS患者には第一選択薬としてIFN-β以外の治療を考慮することが望ましい.
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(臨床神経, 54:972−974, 2014)
key words:多発性硬化症,Sema4A,バイオマーカー,インターフェロン,レスポンダー

(受付日:2014年5月23日)