臨床神経学

<Progress of the Year 2014 02-2> 多系統萎縮症― Update ―

MSAとオートファジー

若林 孝一1), 丹治 邦和1)

1)弘前大学大学院医学研究科脳神経病理学講座〔〒036-8562 青森県弘前市在府町5〕

オートファジーは細胞内分解システムの一つであり,ヒトではオートファゴソーム膜の形成にAtg8ホモローグ(LC3,GABARAP,GABARAPL1,GATE-16)が必須である.レビー小体病(LBD)と多系統萎縮症(MSA)剖検脳を対象に,Atg8ホモローグの変化について病理学的および生化学的検討をおこなった.これらのタンパク質は正常対照では神経細胞の胞体に局在していた.一方,LBDではレビー小体に陽性所見をみとめ,MSAではグリア封入体がLC3強陽性を示した.凍結組織をもちいた定量解析の結果,LBDの側頭葉皮質ではGABARAP/GABARAPL1が正常対照と比較し有意に減少していた.MSAの小脳でもLC3,GABARAP/GABARAPL1およびGATE-16が有意に減少していた.LBDおよびMSAでは,オートファゴソーム膜の形成に異常が生じている可能性が示唆される.オートファジーの活性化や適切な制御によって,神経細胞内の異常タンパク質蓄積が抑制できれば,LBDやMSAをふくむ神経変性疾患に治療効果が発揮できる可能性がある.
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(臨床神経, 54:966−968, 2014)
key words:オートファジー,多系統萎縮症,レビー小体病,Atg8,封入体

(受付日:2014年5月22日)