臨床神経学

<Progress of the Year 2014 02-1> 多系統萎縮症― Update ―

MSAの臨床像と診断基準

渡辺 宏久1), 吉田 眞理2), 祖父江 元3)

1)名古屋大学脳とこころの研究センター〔〒466-8550 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65〕
2)愛知医科大学加齢医科学研究所
3)名古屋大学神経内科

今回のレビューでは,2013年に欧米より報告された多系統萎縮症(MSA)の前方向的自然歴を紹介するとともに現行診断基準の問題点を検討した.現在の診断基準では自律神経不全と運動症状が必須であり,いずれかの異常のみを呈する罹病早期例の診断はできないが,われわれは,自律神経症状を主症候とし,運動症状は無いもしくは軽微で,発症2年以内に突然死したMSA 4例の剖検所見を報告した.一方,パーキンソニズムで発症し,発症から自律神経不全の発現までに9年を要したMSAの4剖検例が欧米から報告されている.“mono system atrophy”ともいうべき段階で診断できるバイオマーカーの開発が重要である.
Full Text of this Article in Japanese PDF (255K)

(臨床神経, 54:963−965, 2014)
key words:多系統萎縮症,早期診断基準,突然死,バイオマーカー,自然歴

(受付日:2014年5月22日)