臨床神経学

<Symposium 33-2> TDP-43の新展開

TDP-43病理形成メカニズムにおけるTDP-43のカルパイン依存性断片化の意義

山下 雄也1), 郭 伸2)

1)東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター臨床医工学部門〔〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1〕
2)国際医療福祉大学臨床医学研究センター

ALSの病理学的指標であるTDP-43病理の形成メカニズムは未解明であり,引き金になるTDP-43の易凝集性断片形成に関与するプロテアーゼやその活性化メカニズムに関する合理的な説明はなかった.われわれは,孤発性ALSのもう一つの疾患特異的分子変化である,RNA編集酵素ADAR2の発現低下を再現するALSの分子病態モデルマウスの解析から,異常なCa2+透過性AMPA受容体発現を介したカルパインの活性化が,凝集性の高いTDP-43断片を形成することを明らかにした.この分子カスケードに通じるメカニズムは,孤発性ALSのみならず他の神経疾患に観察されるTDP-43病理形成にも当て嵌まることが強く示唆されたので概説する.
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(臨床神経, 54:1151−1154, 2014)
key words:筋萎縮性側索硬化症,TDP-43病理,カルパイン,AMPA受容体,カルシウムシグナリング

(受付日:2014年5月24日)