臨床神経学

<Symposium 33-1> TDP-43の新展開

TDP-43変異の生化学的異常

山中 宏二1)

1)名古屋大学環境医学研究所病態神経科学分野〔〒464-8601 愛知県名古屋市千種区不老町〕

変異TDP-43タンパク質の生化学的特徴と臨床情報の検討から,変異TDP-43の細胞内半減期は延長し,半減期とALSの発症年齢は負に相関することをみいだした.本知見に基づき,TDP-43の細胞内半減期を自由に調節できる細胞モデルを開発した.TDP-43タンパク質を安定化するとタンパクの切断,界面活性剤に対する不溶化など孤発性ALSの病巣でみられるTDP-43の生化学的特徴を再現した.安定化TDP-43の存在下では自己mRNAの制御機能が破綻し,TDP-43タンパク質発現を慢性的に上昇させ,蛋白質の機能不全を惹起することを通じて,一部はgain-of-toxicityの機序で神経毒性をきたしうる.
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(臨床神経, 54:1148−1150, 2014)
key words:TDP-43,筋萎縮性側索硬化症,タンパク質安定性

(受付日:2014年5月24日)