臨床神経学

<Symposium 12-4> MSの高次脳機能障害

多発性硬化症と神経障害

水野 哲也1)

1)名古屋大学環境医学研究所神経免疫学講座〔〒464-8601 愛知県名古屋市千種区不老町〕

多発性硬化症(MS)における高次機能障害の原因となる大脳皮質病変には,ミクログリアによる慢性神経炎症の関与が示唆される.脳内の免疫細胞であるミクログリアは,エフェクター細胞としてIFN-γ,IL-1βなどの炎症性サイトカイン,活性酸素,グルタミン酸などの分子を産生し,MSにおける神経細胞障害を誘導する.一方,障害神経細胞は,フラクタルカイン,FGF-2などの分子を産生し,ミクログリアの活性化を制御し,抗炎症作用および抗酸化作用によりミクログリアの神経保護作用を増強する.これらの分子は,ミクログリアによる慢性神経炎症を抑制し,神経保護的に作用することからMSにおける高次機能障害に対する改善効果が期待される.
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(臨床神経, 54:1066−1068, 2014)
key words:ミクログリア,慢性神経炎症,フラクタルカイン,FGF-2

(受付日:2014年5月22日)