臨床神経学

症例報告

原発性骨髄線維症にともなった脊柱管内髄外造血による圧迫性脊髄症の1例

土方 靖浩1)2)*, 安藤 哲朗1), 稲垣 智則1), 渡辺 宏久2), 伊藤 瑞規2), 祖父江 元2)

Corresponding author: 名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学〔〒466-8550 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65〕
1)愛知厚生連安城更生病院神経内科
2)名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学

症例は65歳男性である.貧血および血小板減少を指摘され,骨髄生検で原発性骨髄線維症と診断された.その3ヵ月後,両下肢の脱力が出現し歩行困難となった.脊髄MRIで胸腰椎硬膜外に多発する腫瘤性病変が脊髄を圧迫していた.もっとも高度に圧迫をみとめていた第9胸椎レベルで椎弓切除術を施行し,摘出した腫瘤の病理にて髄外造血巣と診断した.放射線療法後,多発した髄外造血巣の著明な縮小にともなって,自立歩行が可能となった.骨髄造血能の低下をみとめる疾患を有する際には,髄外造血巣が脊柱管内に出現し圧迫性脊髄症をおこしうる.本病態では除圧術および放射線療法が有効であり,治療可能な圧迫性脊髄症と認識することが重要と考えた.
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(臨床神経, 54:27−31, 2014)
key words:髄外造血,脊髄症,骨髄線維症,対麻痺

(受付日:2013年3月18日)