臨床神経学

症例報告

痛みをともなわず1日で横断性脊髄症を生じ広範な脊髄病変を呈した神経Behçet病の1例

作田 健一1), 仙石 錬平1)*, 森田 昌代1), 松島 理士2), 持尾 聰一郎3), 井口 保之1)

Corresponding author: 東京慈恵会医科大学神経内科〔〒105-8461 東京都港区西新橋3-25-8〕
1)東京慈恵会医科大学神経内科
2)東京慈恵会医科大学放射線科
3)東京慈恵会医科大学看護学科

症例は64歳の男性である.痛みをともなわず経過1日で急速に進行した横断性脊髄症を呈した.髄液IL-6 1,120pg/dl,胸椎MRIのT2強調画像で脊髄灰白質中心に高信号域をTh8椎体レベルから脊髄円錐まで広範囲にみとめた.副腎皮質ステロイド,cyclophosphamide投与はいずれも奏功せず,発症2ヵ月で感覚障害の範囲は拡大した.髄液IL-6の高値とHLA-B51陽性より神経Behçet病と診断し,infliximabを投与したところ感覚障害は軽度改善し髄液IL-6も正常値化した.痛みのない急性横断性脊髄症で広範な脊髄病変を呈する際には,神経Behçet病を考慮する必要がある.
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(臨床神経, 54:16−21, 2014)
key words:神経ベーチェット病,横断性脊髄症,HLA-B51,インターロイキン-6,インフリキシマブ

(受付日:2013年2月2日)