臨床神経学

短報

ブタ咬傷20日後に両側感音性難聴をともなうブタ連鎖球菌性髄膜炎を発症した1例

森 晃佑1), 石井 信之1), 望月 仁志1)*, 谷口 晶俊1), 塩見 一剛1), 中里 雅光1)

Corresponding author: 宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野〔〒889-1692 宮崎県宮崎市清武大字木原5200〕
1)宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野

症例は53歳女性である.養豚業に従事している.ブタによる咬傷を契機に,その20日後に人獣共通感染症菌の一つであるブタ連鎖球菌による髄膜炎を発症した.治療開始時より適切な抗菌薬投与に加えてステロイド剤を併用したが,入院9日目より両側の感音性難聴が生じた.難聴に対してステロイドパルス療法をおこなったものの左耳聴力障害は残存した.豚肉産業従事者における就業中の外傷に対してはブタ連鎖球菌感染を念頭に積極的な抗菌薬投与を検討すべきで,髄膜炎が発症したばあいは聴力障害の出現に留意する必要があると考えられた.
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(臨床神経, 53:732−735, 2013)
key words:ブタ連鎖球菌,髄膜炎,難聴,MRI

(受付日:2013年1月19日)