臨床神経学

症例報告

神経症状に長期先行して腎障害を呈したG13513A変異を有するmitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes(MELAS)の1例

元田 敦子1), 倉重 毅志1)*, 杉浦 智仁1), 中村 毅1), 山脇 健盛1), 有廣 光司2), 松本 昌泰1)

Corresponding author: 広島大学病院脳神経内科〔〒734-8551 広島県広島市南区霞1-2-3〕
1)広島大学病院脳神経内科
2)広島大学病院病理診断科

症例は35歳女性である.26歳時より腎障害をきたし,31歳時より慢性腎不全で腎移植待機中であった.35歳時に全身痙攣で来院した.痙攣消失後に意識障害が長期間遷延し,血中・髄液中の乳酸とピルビン酸の高値,脳萎縮,感音性難聴をみとめ,筋生検でMELASと確定診断した.L-アルギニン内服を開始したところ,MRI上病変の進展はみられたものの臨床症状は大きな増悪なく経過した.その後,筋検体の遺伝子検索でミトコンドリアDNA G13513A変異が判明した.本症例はMELASの中でも頻度の少ない変異を有しており,stroke-like episodeに先行して腎不全をきたした点が特徴的と考えられた.
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(臨床神経, 53:446−451, 2013)
key words:MELAS,腎不全,mitochondrial nephropathy,G13513A変異,アルギニン

(受付日:2012年10月5日)