臨床神経学

症例報告

線維筋形成不全により両側内頸動脈閉塞と脳底動脈の高度狭窄をきたした1例

吉田 俊一1)*, 江口 馨2), 小野寺 一成1), 鈴木 健吾1), 藤城 健一郎1), 陸 重雄1)

Corresponding author: 社会保険中京病院神経内科〔〒457-8510 愛知県名古屋市南区三条1-1-10〕
1)社会保険中京病院神経内科
2)社会保険中京病院脳神経外科

症例は26歳女性である.頻回の一過性両下肢脱力発作をくりかえし,しだいに左上下肢脱力発作へと変化する症状を訴え来院した.頭部MRIでは無症候性の小梗塞が散在し,頭部MRAで両側内頸動脈閉塞および高度脳底動脈狭窄をみとめた.抗血小板薬内服,右浅側頭動脈中大脳動脈吻合術を施行し,右内頸動脈の生検にて線維筋形成不全(fibromuscular dysplasia; FMD)の診断をえた.組織型はintimal fibroplasia typeであった.両側内頸動脈閉塞および高度脳底動脈狭窄をきたしたFMDの例はまれであり,若年性脳梗塞において原因不明の血管病変がみられたばあいは,FMDの可能性を考えることが重要である.
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(臨床神経, 53:439−445, 2013)
key words:線維筋形成不全,両側内頸動脈閉塞,脳底動脈狭窄,一過性脳虚血発作

(受付日:2012年9月17日)