臨床神経学

症例報告

進行性球麻痺のみを呈した高齢発症重症筋無力症の1例

井上 学1)*, 小島 康祐1), 金星 匡人1), 中川 朋一1), 神田 益太郎1), 柴ア 浩2)

Corresponding author: 医仁会武田総合病院神経内科〔〒601-1495 京都市伏見区石田森南町28-1〕
1)医仁会武田総合病院神経内科
2)京都大学

症例は69歳女性である.進行性の嚥下困難で当科受診した.神経学的には,軟口蓋の挙上不全と著明な開鼻声と嚥下障害をみとめたが,四肢をふくめて易疲労性はなく,複視,眼瞼下垂もみとめなかった.3 Hz反復刺激試験で口輪筋および上肢筋に漸減現象はみとめられなかったが,テンシロンテストで球症状の改善をみとめた.抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体は陽性,抗筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)抗体は陰性であった.球麻痺型重症筋無力症の診断でプレドニゾロンおよび臭化ピリドスチグミンを内服後,経口摂取可能となった.進行性球麻痺を単独に呈し,易疲労性がみとめられなくても重症筋無力症のことがあるので,注意を要する.
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(臨床神経, 53:229−234, 2013)
key words:重症筋無力症,進行性球麻痺,易疲労性の欠如,抗アセチルコリンレセプター抗体

(受付日:2012年7月5日)