臨床神経学

原著

成人後に診断された有機酸・脂肪酸代謝異常症の臨床的検討

山田 健治1)*, 長谷川 有紀1), 吉川 陽子2), 高橋 知男1), 小林 弘典1), 虫本 雄一1), Jamiyan Purevsuren1), 山口 清次1)

Corresponding author: 島根大学医学部小児科〔〒693-8501 島根県出雲市塩冶町89-1〕
1)島根大学医学部小児科
2)小倉医療センター小児科

成人後に発症する先天代謝異常症(inborn errors of metabolism, IEM)はまれと考えられているが,詳細は不明である.2001年から2010年に当科で,成人後に診断されたIEMについて臨床経過や予後を検討した.IEMと診断した386例のうち24例が成人後に診断された.そのうち成人期の発症例は15例あった.疾患の内訳はアルカプトン尿症11例,その他の有機酸代謝異常症6例,尿素サイクル異常症4例,脂肪酸代謝異常症3例であった.IEMの成人例はまれであるが,発症時期にかかわらず,診断の遅れが患者QOLの低下に繋がる.原因不明の発達遅滞や退行例などでは,成人であってもIEMを念頭においた検索が必要である.
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(臨床神経, 53:191−195, 2013)
key words:先天代謝異常症,成人発症,尿中有機酸分析,タンデムマス,重症心身障害者

(受付日:2012年2月17日)