臨床神経学

<ホットトピックス(2)―1>

マイクロRNAと神経変性疾患

祖父江 元1)

1)名古屋大学大学院医学系研究科神経内科〔〒466-8550 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65〕

マイクロRNA(microRNA; miRNA)は標的遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)に結合することで,遺伝子の発現抑制をおこなう.こうした遺伝子発現制御が癌や神経変性などの病態を修飾することが示されている.筆者らは球脊髄性筋萎縮症(SBMA)のマウスモデルにおいて発現が上昇しているmiRNAとしてmiR-196aを同定し,それをアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターをもちいてマウスモデルに遺伝子導入することによって,病因蛋白質である変異アンドロゲン受容体の発現を抑制し,運動ニューロン変性を抑止できることを明らかにした.内因性の核酸を利用した治療法として,今後miRNAの他の疾患への応用が期待される.
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(臨床神経, 53:942−944, 2013)
key words:マイクロRNA,アデノ随伴ウイルスベクター,球脊髄性筋萎縮症,運動ニューロン

(受付日:2013年5月30日)