臨床神経学

<シンポジウム(1)―4―5>iPS細胞研究の現状と展望

iPS細胞をもちいたALSの病態解析

江川 斉宏1)2), 井上 治久1)2)

1)京都大学iPS 細胞研究所臨床応用研究部門〔〒606-8507 京都府京都市左京区聖護院川原町53〕
2)JST, CREST

われわれは,transactive response DNA binding protein 43 kDa(TDP-43)遺伝子変異を有する家族性筋萎縮性側索硬化症(familial amyotrophic lateral sclerosis; FALS)患者由来の人工多能性幹細胞(induced pluripotentstem cell; iPS細胞)を樹立し,それらから分化誘導した運動ニューロンをもちいてALSの病態解析をおこなった.FALS由来iPS細胞の運動ニューロン分化能は正常であり,神経細胞へ分化後,TDP-43タンパク質は生化学的に不溶性を獲得していた.純化したFALS運動ニューロンでは,神経細胞骨格関連の遺伝子が低下し,神経突起が短縮していた.さらに,酸化ストレスに対する脆弱性をみとめ,アナカルジン酸投与によりこれらの表現型は改善した.iPS細胞由来の運動ニューロンをもちいて,ALSの新規治療薬シーズの発見が期待できる.
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(臨床神経, 53:1020−1022, 2013)
key words:人工多能性幹細胞,筋萎縮性側索硬化症,薬剤スクリーニング

(受付日:2013年5月29日)