臨床神経学

短報

上肢優位の疼痛とfasciculationのみを呈した抗VGKC複合体抗体陽性例の1例

原 賢寿1)*, 渡邊 修2), 柴野 健1), 石黒 英明1)

Corresponding author: 秋田赤十字病院神経内科〔〒010―1495 秋田市上北手猿田字苗代沢222―1〕
1)秋田赤十字病院神経内科
2)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経内科・老年病学

症例は21歳男性である.1週間前から右上肢の激しい痛みとぴくぴくする感覚が出現した.筋強直やミオキミア,発汗過多はなく,右前腕にfasciculationをみとめた.針筋電図では右上腕二頭筋,右長橈側手根伸筋にfibrillation potentialのみをみとめた.抗てんかん薬の内服により症状は改善したが左上肢と両側大腿にも激痛が出現し,血清抗VGKC複合体抗体が陽性であったため,免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)とステロイドパルス療法をおこなったところ疼痛は軽減した.本例はIsaacs症候群とくらべミオキミアや有痛性筋攣縮などの運動症状に乏しく,上肢優位の疼痛が主体である点が特徴的であった.
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(臨床神経, 52:677−680, 2012)
key words:上肢,疼痛,fasciculation,抗VGKC複合体抗体,ステロイドパルス療法

(受付日:2011年11月24日)