臨床神経学

症例報告

心筋へのMIBG集積低下をみとめ,交感神経節に限局するLewy小体を合併した大脳皮質基底核変性症の1剖検例

森 恵子1)*, 岩崎 靖2), 伊藤 益美1), 三室 マヤ2), 吉田 眞理2)

Corresponding author: 小山田記念温泉病院神経内科〔〒512―1111 三重県四日市市山田町5538―1〕
1)小山田記念温泉病院神経内科
2)愛知医科大学加齢医科学研究所神経病理部門

症例は死亡時86歳の男性である.進行性の歩行障害,筋強剛,認知症を呈した.静止時振戦,L-dopaの反応性,自律神経障害はなかったが,MIBG心筋シンチグラフィーの集積低下をみとめ,Lewy小体型認知症と臨床診断された.死亡後の病理診断は大脳皮質基底核変性症であった.全身病理では心臓交感神経終末が高度に脱落しており,MIBGの集積低下を反映していた.さらに中枢神経,消化管,副腎等にはみられなかったLewy小体が交感神経節に限局してみとめられた.MIBGの集積低下はLewy小体の存在を示唆するが,その広がりまでは予見できず,また偶発的にLewy小体が合併する事を臨床診断の際には考慮する必要がある.
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(臨床神経, 52:405−410, 2012)
key words:パーキンソン症候群,大脳皮質基底核変性症,MIBG心筋シンチグラフィー,Lewy小体,交感神経節

(受付日:2011年10月3日)