臨床神経学

原著

無動性無言状態にいたったプリオン病患者の臨床経過と治療に関する検討

岩崎 靖1)2)*, 森 恵子2), 伊藤 益美2)

Corresponding author: 愛知医科大学加齢医科学研究所〔〒480―1195 愛知県長久手市岩作雁又1番地1〕
1)愛知医科大学加齢医科学研究所神経病理部門
2)小山田記念温泉病院神経内科

無動性無言状態にいたったプリオン病患者の臨床経過と治療について自験12例をもちいて後方視的検討をおこなった.無動性無言状態における当院での入院期間はのべ3,968日で,全例で経鼻カテーテルによる経管栄養を施行し,胃瘻造設術や気管切開術を施行した症例はなかった.気管内挿管や人工呼吸器接続,昇圧剤投与はおこなわれなかった.気道感染などの合併症には抗生剤投与や持続点滴をふくめた対症療法を適宜おこなっていた.本邦のプリオン病患者は欧米例に比し生存期間が長いといわれるが,経管栄養や対症療法,一般的におこなわれている看護や介護,リハビリテーションにより長期延命していることが示唆された.
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(臨床神経, 52:314−319, 2012)
key words:プリオン病,無動性無言状態,経鼻経管栄養,対症療法,呼吸不全

(受付日:2011年9月17日)