臨床神経学

症例報告

遺伝性出血性毛細血管拡張症にともなう肺動静脈瘻を介し奇異性脳塞栓症を発症した1例

竹田 淳恵, 藤堂 謙一, 山本 司郎, 山上 宏, 川本 未知, 幸原 伸夫

Corresponding author: 神戸市立医療センター中央市民病院神経内科〔〒650―0047 神戸市中央区港島南町2丁目1―1〕
神戸市立医療センター中央市民病院神経内科

症例は25歳男性である.小児期からくりかえす鼻出血の既往があった.臥位で読書中に突然の頭痛と共に視野欠損を自覚し,救急受診した.左上同名性四分盲があり,MRI拡散強調画像で右後頭葉内側に高信号領域をみとめ脳梗塞の診断で入院となった.経食道心エコーで右左シャントが確認され,胸部造影CTで左下葉の肺動静脈瘻をみとめ,奇異性脳塞栓症と診断し,肺動脈コイル塞栓術を施行した.既往歴・家族歴から遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)にともなう肺動静脈瘻と診断した.本邦ではHHTの頻度が欧米にくらべて低いと考えられているが,脳梗塞の原因疾患として肺動静脈瘻が発見されたばあいには,HHTを念頭に病歴・家族歴聴取をおこなう必要がある.
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(臨床神経, 52:161−165, 2012)
key words:脳梗塞,奇異性脳塞栓症,肺動静脈瘻,遺伝性出血性毛細血管拡張症

(受付日:2011年9月7日)