臨床神経学

<シンポジウム(3)―12―6>東日本大震災:あれから一年

日本神経学会災害支援プログラムの策定に向けて

阿部 康二

岡山大学神経内科〔〒700―8558 岡山市鹿田町2―5―1〕

2011年3月11日金曜日の東日本大震災・東北大津波から1年が経過したが,未だ被災地では復興がほとんど進んでいないのが現状である.被災直後は救命処置が主体のはずであったが,地震のみの被害とことなり津波被害のばあいはほとんどのケースがall or nothing で津波に飲み込まれての溺水死か,走り逃げてまったく身体的障害がなかったかに2極分化したことであった.一方,高齢者や認知症,神経難病など多くの神経内科疾患患者さんは災害弱者でもあって,地震や津波などの災害時における避難にはきわめて不利な立場にある.そこで日本神経学会ではIT化推進委員会が中心になって,2012年1月から今災害時の被災地支援意見交換メーリングリスト登録の先生方と共同で「日本神経学会災害支援プログラム」を策定する作業に入っている.その趣旨は今後予想されうる自然災害や人的災害に際して,日本神経学会として神経内科疾患全般の患者さん方への災害時の緊急受入れ体制ネットワークの整備や災害時医療支援チーム派遣の組織化などについて,IT技術も活用して構築することである.具体的には今後想定される災害やそれによる具体的被害,想定される神経内科疾患患者,災害時患者受入れ施設ネットワークの確立,災害時医療支援チーム派遣組織化,関連団体との折衝他について委員会案を作成中である.5月までに委員会案を神経学会ホームページに公開して,会員の皆様や患者さんからも広くパブリックコメントをいただいた上で,5月の学術大会終了後からプログラムに基づいて実際のネットワーク構築作業に入る予定である.本シンポジウムではこれまでの経過報告をさせていただき,参加者の皆様からご意見をいただきたいと考えている.
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(臨床神経, 52:1348−1350, 2012)
key words:災害支援ネットワーク,日本神経学会,IT技術

(受付日:2012年5月25日)