臨床神経学

<シンポジウム(3)―1―1>アカデミア発の創薬

球脊髄性筋萎縮症(SBMA)に対する抗アンドロゲン療法

勝野 雅央1), 坂野 晴彦1)2), 鈴木 啓介1), 橋詰 淳1), 足立 弘明1), 田中 章景1)3), 祖父江 元1)

1)名古屋大学大学院医学系研究科神経内科〔〒466―8550 名古屋市昭和区鶴舞町65〕
2)名古屋大学高等研究院
3)横浜市立大学大学院医学系研究科神経内科学・脳卒中医学

球脊髄性筋萎縮症(SBMA)はアンドロゲン受容体(AR)遺伝子におけるCAGくりかえし塩基配列の異常延長を原因とする運動ニューロン疾患であり,伸長ポリグルタミン鎖を有する異常AR蛋白質がテストステロンと結合することによってニューロンの核内に蓄積することが病態の本質と考えられている.テストステロンの分泌を抑制するリュープロレリン酢酸塩のSBMAに対する第III相臨床試験では,主要評価項目である咽頭部バリウム残留率について,被験者全体の解析では統計学的有意差はみとめられなかったが,罹病期間が10年以内の被験者のみを対象としたサブ解析では残留率が酢酸リュープロレリン群で有意に低下したことから,発症からの期間が薬効に影響をおよぼすことが示唆された.早期の治療介入や鋭敏なエンドポイントの開発が今後のトランスレーショナルリサーチに重要であると考えられる.
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(臨床神経, 52:1207−1209, 2012)
key words:球脊髄性筋萎縮症,リュープロレリン酢酸塩,トランスレーショナルリサーチ,臨床試験,エンドポイント

(受付日:2012年5月25日)