臨床神経学

短報

自然軽快したbow hunter症候群の1例

田中 将平1)2), 稲富 雄一郎1)*, 米原 敏郎1), 平野 照之3), 内野 誠3)4)

Corresponding author: 社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院脳卒中センター神経内科〔〒861―4193 熊本市近見5丁目3番1号〕
1)済生会熊本病院脳卒中センター神経内科
2)現国立国際医療研究センター消化器科
3)熊本大学大学院医学薬学研究部神経内科学分野
4)現 城南病院

74歳の男性が頸部を左に過回旋した際にもうろう状態となることに気付き,当科を受診した.初診時,頸部左過回旋位で意識もうろうとなることを訴えたが,正中位では異常なし.経頭蓋カラードプラでは,左椎骨動脈の収縮期血流速度は左回旋位で低下した.脳血管造影では右椎骨動脈は低形成であり,左回旋位で左椎骨動脈のC6位に高度狭窄が出現した.Bow hunter 症候群と診断したが,頸部過回旋を避けることで発作が予防可能であることから,経過観察した.その後,しだいに頸部過回旋位でも発作はおこらなくなった.6カ月後の経頭蓋カラードプラでは左椎骨動脈の血流速度低下はみとめず,脳血管造影でも椎骨動脈の狭窄は軽減していた.
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(臨床神経, 52:34−37, 2012)
key words:Bow hunter症候群,椎骨動脈,保存的治療

(受付日:2011年4月9日)