臨床神経学

原著

感覚障害を主徴とする橋・中脳梗塞:診断的困難さとSEPの有用性

北國 圭一 ,園生 雅弘, 村嶋 英治 ,岩波 知子 ,西山 恭平 ,河村 保臣 ,新井 祐子 ,塚本 浩 ,畑中 裕己 ,清水 輝夫

Corresponding author: 帝京大学医学部神経内科〔〒173―8605 東京都板橋区加賀2―11―1〕
帝京大学医学部神経内科

片麻痺や他の脳幹症状をともなわず,感覚障害を主徴とした脳幹梗塞13例を報告した.病巣は橋12例,中脳1例,いずれも内側毛帯ないし脊髄視床路に限局するラクナ梗塞で,様々な分布の異常感覚が必発であった.当初MRI病変が見逃され,正しい診断にいたるまで長期を要した症例が2例みられた.正中神経刺激体性感覚誘発電位が頭蓋内に病変を局在するのに役立った.急性期梗塞入院患者にかぎった症例対照研究では,橋・中脳梗塞10例に対し,視床梗塞11例で,過去の報告にくらべて前者の相対頻度が高く,従来かなりの脳幹梗塞が見逃されている可能性が考えられた.本病型は感覚障害を急性発症した患者で,常に念頭に置くべきである.
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(臨床神経, 51:248−254, 2011)
key words:脳幹梗塞,視床梗塞,ラクナ梗塞,純粋感覚卒中,体性感覚誘発電位

(受付日:2010年8月20日)