臨床神経学

<シンポジウム30―3>アミロイドーシスupdate

家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)に対する肝移植の有用性と限界

安東 由喜雄

熊本大学大学院生命科学研究部病態情報解析学分野〔〒860―0811 熊本市本荘1 丁目1―1〕

トランスサイレチン(TTR)の遺伝子変異が原因となっておこる家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)は,血中異型TTRのほとんどが肝臓から産生されることから,これを抑制する目的で肝移植が広くおこなわれるようになった.移植後多くの症例でFAPの臨床進行が停止するか,遅延することが確認されているが,眼のアミロイド沈着は制御できない上,心症状やニューロパチーが進行する症例もある.われわれの施設でおこなった移植後10年以上経過したFAP患者の剖検例の解析では,多くの臓器で明らかなアミロイド沈着の減少をみとめたが,心臓,肺などの臓器でアミロイド沈着量が増加し,ワイルドタイプTTRの比率が増加していた.肝移植にはいくつかの問題点もあるため,これに代わる治療法として,TTRの四量体を安定化する目的でいくつかの薬物治療法,TTRの産生を抑制する目的でsiRNAなどをもちいた遺伝子治療,ミスフォールディングを阻止する目的で低分子化合物や抗体治療法などが実用化に向けて盛んに研究されてきている.
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(臨床神経, 51:1138−1141, 2011)
key words:トランスサイレチン,アミロイドーシス,家族性アミロイドポリニューロパチー,心アミロイドーシス,抗体治療

(受付日:2011年5月20日)