臨床神経学

短報

偽性尺骨神経麻痺で発症した内頸動脈狭窄にともなう進行性脳梗塞

柿沼 佳渚子, 中島 雅士, 稗田 宗太郎, 市川 博雄, 河村 満

Corresponding author: 昭和大学医学部内科学講座神経内科学部門〔〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8〕
昭和大学医学部内科学講座神経内科学部門

右小指球の感覚障害で発症,その後第2病日には鷲手,さらに第3病日には右上肢全体の筋力低下へと進行した脳梗塞の63歳男性を報告する.頭部MRIでは,左大脳半球半卵円中心の前大脳動脈・中大脳動脈境界領域に散在する梗塞巣をみとめ,その一部は手の運動領域であるprecentral knob内側をふくんでいた.頸動脈エコーおよび頸部MRAでは左内頸動脈に高度の狭窄と不安定プラークをみとめた.手指の一部に限局した運動・感覚障害を呈する脳梗塞は,Roland動脈終末枝の塞栓性機序だけでなく,単麻痺へと進行しうる血行力学性機序によるものがあり,その病因の一つとして内頸動脈のアテローム性変化が重要である.
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(臨床神経, 50:666−668, 2010)
key words:偽性尺骨神経麻痺,皮質型単麻痺,precentral knob,内頸動脈狭窄,脳梗塞

(受付日:2010年5月6日)