臨床神経学

症例報告

発汗障害によるうつ熱をきたしたパーキンソン病の1例

迫 祐介, 麻生 泰弘, 中村 憲一郎, 木村 成志, 熊本 俊秀

Corresponding author:大分大学医学部総合内科学第三講座〔〒879-5593 大分県由布市挟間町医大ヶ丘1丁目1番地〕
大分大学医学部総合内科学第三講座

症例は71歳の男性である.1995年にパーキンソン病と診断され,抗パーキンソン病薬が開始された.2006年6月下旬より38℃〜39℃台の発熱が出現し,9月中旬に自然に消失した.2007年7月上旬よりふたたび発熱し,持続するため当科に入院した.神経学的には前傾姿勢,小歩をみとめ,オフ時には著明な筋強剛,無動,静止時振戦をみとめた.血液検査や全身CT検査では異常はなかった.起立性低血圧,および発汗テストにて腹部以下の発汗低下をみとめた.発熱は周囲環境温度の調節により低下傾向を示し,発汗障害にともなううつ熱と診断した.パーキンソン病では様々な自律神経症状をともなうがうつ熱をきたした症例の報告はしらべたかぎりはなく,貴重な症例と考えられた.
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(臨床神経, 50:151−155, 2010)
key words:パーキンソン病, 自律神経機能障害, 体温調節, 発汗機能障害, うつ熱

(受付日:2009年7月9日)