臨床神経学

症例報告

頭部MRIにて広汎な病変をみとめ,抗GAD抗体の関連が示唆された免疫介在性脳症の1例

小早川 優子, 立石 貴久, 河村 信利, 土井 光, 大八木 保政, 吉良 潤一

Corresponding author:九州大学大学院医学研究院神経内科学〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕
九州大学大学院医学研究院神経内科学

症例は36歳女性.全身痙攣にて前医へ入院し,抗けいれん薬に抵抗性の意識消失発作をくりかえし,頭部MRIにて両側前頭葉を中心に広汎なT2延長病変をみとめ当院へ転院した.精査にて血清,髄液中の抗glutamic acid decarboxylase(GAD)抗体価の異常高値をみとめ,血漿交換療法にて抗体価の低下とともに臨床症状,画像所見が改善した.抗GAD抗体陽性の神経疾患としてStiff-person症候群や難治性てんかんが知られているが,本症例のように広汎なMRI病変をともなう免疫介在性脳症の報告はきわめてまれである.症候性てんかんをともなう脳症では,広汎なMRI病巣を呈するばあいでも抗GAD抗体の関連をうたがう必要がある.
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(臨床神経, 50:92−97, 2010)
key words:抗GAD抗体, 難治性てんかん, 脳症, 頭部MRI, 血漿交換療法

(受付日:2009年7月9日)