臨床神経学

症例報告

無症候性原発性胆汁性肝硬変にともなう感覚性運動失調型ニューロパチーの1例

豊岡 圭子1)*, 秋山 太助1), 安井 久美子1), 上田 佳世2), 藤村 晴俊1)

Corresponding author:独立行政法人国立病院機構刀根山病院〔〒560-8552 大阪府豊中市刀根山5-1-1〕
1)独立行政法人国立病院機構刀根山病院神経内科
2)同 臨床検査科病理部

症例は65歳女性である.原発性胆汁性肝硬変(PBC)の発症にともない,約12年の経過で非対称性に上肢に限局する感覚性運動失調型ニューロパチー(SAN)が進行した.神経伝導検査で上肢の感覚神経活動電位は導出されず,右橈骨神経浅枝生検にて大径有髄線維密度の高度減少をみとめた.各種検査よりシェーグレン症候群(SjS)や傍腫瘍性神経症候群は否定的で,無症候性PBCに合併したと診断した.ステロイド治療や免疫グロブリン大量静注療法を施行したが,症状は進行性である.病態機序としてSjSにともなうものと酷似するganglionopathyの可能性を考えた.SANの鑑別診断としてPBCも考慮する必要があると思われた.
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(臨床神経, 50:12−16, 2010)
key words:感覚性運動失調型ニューロパチー, 原発性胆汁性肝硬変, ステロイド治療, 免疫グロブリン大量静注療法, シェーグレン症候群

(受付日:2009年4月9日)