臨床神経学

症例報告

副交感神経障害を主徴としたMPZ遺伝子変異Thr124MetによるCharcot-Marie-Tooth病の1例

中村 憲道, 河村 信利, 立石 貴久, 土井 光, 大八木 保政, 吉良 潤一

Corresponding author:九州大学大学院医学研究院神経内科学〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕
九州大学大学院医学研究院神経内科学

症例は49歳男性である.37歳より排尿困難,48歳より羞明が出現した.神経学的には左眼の散瞳,両側対光反射の低下をみとめた.筋力は正常で,排尿障害,勃起障害をみとめた.0.125%ピロカルピン点眼試験での過敏性縮瞳,膀胱機能検査での無緊張性膀胱の所見から副交感神経節後性の障害が示唆された.交感神経機能検査は正常であった.遺伝子検査にてMPZ変異Thr124MetをみとめCharcot-Marie-Tooth病(CMT)と診断した.本症例の家族6名にも同様の自律神経症状をみとめた.本変異にともなうCMTの自律神経障害は選択的な副交感神経節後性の分布を示すと考えられた.
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(臨床神経, 49:582−585, 2009)
key words:Charcot-Marie-Tooth病, MPZ遺伝子変異, 自律神経障害

(受付日:2009年6月29日)