臨床神経学

症例報告

中枢神経系浸潤を示した侵襲性副鼻腔アスペルギルス症の2例―voriconazoleの効果と血管病変について

上野 亜佐子1), 濱野 忠則1)*, 藤井 明弘1), 松永 晶子1), 長沼 誠二2), 米田 誠1), 伊藤 浩史2), 栗山 勝1)

Corresponding author:福井大学医学部附属病院第2内科〔〒910-1193 福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3〕
1)福井大学医学部内科学2(神経内科)
2)同 腫瘍病理学(第一病理学)

侵襲性副鼻腔アスペルギルス症が中枢神経系に浸潤した2症例の治療経験を報告する.両症例とも当初はvoriconazoleが顕著な治療効果を示した.しかしvoriconazoleに対する耐性菌の出現,あるいはバイオフィルムの形成のためか,継続した治療効果をえられず,脳血管障害が合併し死亡した.1症例で剖検をおこない,アスペルギルスの血管壁内浸潤が確認された.アスペルギルスは血管侵襲性が強く,そのための脳血管障害を生じるときわめて予後不良であり,血管侵襲を生ずる以前からのvoriconazole投与開始が望まれる.また他の抗真菌剤との効果的な併用も今後考慮される必要があると思われた.
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(臨床神経, 49:468−473, 2009)
key words:中枢神経系アスペルギルス症, voriconazole, 副鼻腔, 脳血管障害

(受付日:2008年10月14日)