臨床神経学

短報

血栓溶解療法が無効であった頸動脈石灰化病変由来のcalcified cerebral emboliの1例

岡崎 周平1)*, 坂口 学2), 杉山 幸生1), 大江 洋史1), 北川 一夫1), 佐古田 三郎1)

Corresponding author:大阪大学大学院医学系研究科神経内科学〔〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2〕
1)大阪大学医学部付属病院神経内科・脳卒中科
2)同 脳卒中センター

症例は71歳の男性である.右片麻痺,全失語にて発症し,入院時の頭部CTでは出血性病変や早期虚血変化をみとめなかったが,左中大脳動脈領域に点状の石灰化塞栓を多数みとめた.発症3時間以内であり血栓溶解療法の適応と考えt-PAを経静脈的に投与したが,投与後も明らかな症状の改善はえられなかった.後日撮影した頭部CTでは点状の石灰化塞栓に一致して多発性の梗塞巣の出現をみとめ,頸動脈エコーおよび頸部CT血管撮影では左内頸動脈起始部に潰瘍をともなう石灰化病変をみとめたため,calcified cerebral emboliと診断した.頸動脈の石灰化病変に起因したcalcified cerebral emboliの報告はまれであるが,特徴的な画像所見を呈する病態であり,血栓溶解療法の適応についても検討を要すると考えられる.
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(臨床神経, 49:281−284, 2009)
key words:脳梗塞, 頸動脈狭窄, 血栓溶解療法, t-PA, calcified cerebral emboli

(受付日:2009年2月9日)