臨床神経学

症例報告

顔面をふくまない半身の温痛覚障害のみを呈した延髄外側梗塞の67歳男性例

柏村 陽子, 川井 元晴, 小笠原 淳一, 古賀 道明, 根来 清, 神田 隆

Corresponding author:山口大学大学院医学系研究科神経内科〔〒755-8505 山口県宇部市南小串1-1-1〕
山口大学大学院医学系研究科神経内科

顔面をふくまない半身の温痛覚障害のみを呈した67歳男性例を報告する.左半身の激痛とびりびり感があり,左C3髄節レベル以下に温度覚低下と著明な痛覚過敏をみとめたが,通常の頭部・脊髄MRIでは明らかな異常信号域を指摘できなかった.顔面の感覚障害やめまい,構音障害,歩行障害はなかったが,左半身の激痛とびりびり感といった特徴的な感覚症状から延髄外側症候群をうたがい,thin sliceで再検した頭部MRIでT2強調画像で右延髄外側に直径1 mm大の高信号域をみとめ,延髄外側梗塞と診断できた.本例は顔面をふくまない半身の感覚障害が唯一の症状であり,椎骨動脈系の分水嶺にあたる外側脊髄視床路のみが障害されたと考えた.痛みにはカルバマゼピンが有効であった.
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(臨床神経, 49:262−266, 2009)
key words:延髄外側症候群, 延髄外側梗塞, 頭部MRI, 外側脊髄視床路

(受付日:2008年8月27日)