臨床神経学

第50回日本神経学会総会

<シンポジウム9―4>ポリグルタミン病への分子生物学的アプローチ
球脊髄性筋萎縮症に対する分子治療

勝野 雅央1)2), 坂野 晴彦1), 鈴木 啓介1), 足立 弘明1), 田中 章景1), 祖父江 元1)

1)名古屋大学大学院医学系研究科神経内科〔〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65〕
2)名古屋大学高等研究院

球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は成人男性に発症する運動ニューロン疾患であり,アンドロゲン受容体遺伝子(AR)のCAGくりかえし配列の異常延長を原因とするポリグルタミン病である.病因蛋白質である変異ARが運動ニューロン内に蓄積し,転写障害や軸索輸送障害など様々な細胞機能低下をひきおこすという病態仮説が提唱されている.変異ARの蓄積はテストステロンに依存しており,男性ホルモン抑制剤であるリュープロレリン酢酸塩の有効性がSBMA患者を対象とした第II相臨床試験で示されている.今後SBMAの治療法開発を更に進めるためには,多彩な分子生物学的アプローチと,その効果を臨床試験で検証するための方法論を確立する必要がある.
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(臨床神経, 49:917−920, 2009)
key words:ポリグルタミン, アンドロゲン受容体, テストステロン, 根本治療, バイオマーカー

(受付日:2009年5月22日)