臨床神経学

総説

高齢者の慢性めまい感―その臨床的特徴と脳磁図所見―

成冨 博章

国立循環器病センター内科脳血管部門〔〒565-8565 大阪府吹田市藤白台5-7-1〕

めまい感(dizziness)を訴える高齢者は多い.その原因は多様とされており,出現機序の詳細は未だ明らかではない.高頻度にみられる症状や検査所見としては,睡眠障害,頸部痛,視覚異常,うつ状態,頸椎病変,脳の白質病変,などがあげられる.しかし,これらがどのようにしてめまい感に結びつくかは不明である.筆者らは脳磁図をもちいた検討により,めまい感老人には二つのタイプの脳機能異常がみられることを報告してきた.一つは,側頭葉神経の異常興奮,他の一つは左右側頭葉間の神経伝達遅延である.神経伝達遅延は白質病変の程度が強いほど著明であった.脳磁図所見から推定されるめまい感の出現機序を述べてみたい.
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(臨床神経, 48:393−400, 2008)
key words:めまい感, 高齢者, 脳磁図, 大脳半球間神経伝達時間, 頭位認識中枢

(受付日:2008年3月4日)