臨床神経学

総説

超急性期脳梗塞に対するrt-PA静注療法

木村 和美

川崎医科大学脳卒中医学〔〒701-0192 倉敷市松島577〕

わが国でも2005年10月に発症3時間以内の脳梗塞に対してrt-PAの使用がみとめられbrain attackの時代が到来した.2007年3月までに約5,700例に使用され,2,484例(平均70歳,投与前NIHSS中央値15)の解析によると,3カ月後の転帰でmRS0〜1 32%,死亡20%,症候性頭蓋内出血が5.2%であった.当院にて平成19年11月までに,63例(中央値74歳,NIHSSスコア中央値14)にrt-PA静注療法をおこなった.rt-PA投与直後のdramatic recoveryは8例(12.7%)で,7日目の転帰は,著効49.2%,改善15.9%,増悪12.7%であった.投与直後(1時間以内)の再開通率は43.5%で,再開通例では7日目の著効・改善が非再開通例とくらべ多かった(70% vs. 31%).非早期再開通の因子として心房細動があげられた.rt-PA投与前DWI所見をDWI-ASPECTSにて評価し,1週間後の転帰についてしらべると,転帰不良例はDWI-ASPECTSが5点以下では8例中6例,DWI-ASPECTSが6点以上では41例中2例であった(p<0.0001).以上よりrt-PA投与前のDWI-ASPECTSが5以下のばあいは,rt-PAの効果はあまり期待されないと考えられる.
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(臨床神経, 48:311−320, 2008)
key words:rt-PA, 血栓溶解療法, 脳梗塞急性期, 転帰, DWI

(受付日:2008年1月23日)